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【Podcast書き起こし】 「みんなの銀行」誕生秘話|僕らのお金をリ・デザインする #01

アクセンチュア ソングでは、デザインやDX、サステナビリティ、カーボンニュートラル、メタバースなどビジネスで話題のテーマをピックアップして、専門家やデザイナーとともに議論しながら理解を深めるトーク番組「exe」をPodcastで定期的に配信しています。

「みんなの銀行」はデジタルネイティブ世代(Z世代・Y世代)をターゲットとした、全ての金融サービスをスマートフォン完結で利用できる、日本初のデジタル銀行です。アクセンチュアでは金融サービスをゼロから再設計・再定義し、モダンなデザインプロセスとシステムアーキテクチャを採用することで新しい金融サービス体験を提供するご支援をさせていただきました。

今回はデジタル庁のCDO(Chief Design Officer)(※収録当時。22年4月よりデジタル庁デジタル監に就任)の浅沼さん、株式会社ギフティでChief Creative Officerを務める長谷川さんのお二人をゲストにお招きして、アクセンチュア ソングのデザイナー柳さんとともに、収録したPodcastの一部を紹介します。

Podcastはこちらから↓

Key takeaways

①「銀行 = ライフスタイルブランド」 化

銀行のデジタル化の先には、ライフスタイルブランド化という潮流がある。例えば、ドイツ初のモバイルバンクN26は、金融機能としてだけではなく、洋服やインテリアの様に、持っていて愛したくなるようなライフスタイルブランドを目指している。

②店舗だけでなく、業務プロセスからDXを思考する「デジタルバンク」

ネットバンクは、実店舗を持たないという点以外は従来の銀行と根本的には変わらない一方で、みんなの銀行が実現したデジタルバンクは、業務プロセス等も含め全てデジタル化し、ゼロベースでのDXに挑戦している。

③将来の顧客にターゲットを振り切るも、現顧客からも高満足度を獲得

今ではなく未来のメインプレーヤーを確実に押さえたいという思いからデジタルネイティブにターゲットを設定。狙い通りユーザーの約7割が10-30代であるのに加え、高齢者層からの支持をも獲得し、結果的に多くの世代に愛されるアプリとなった。


本文

浅沼)今日は、金融のコアな話から、幅広く、今後の未来のデザインをどうしていくのか、のような話まで多岐に渡って、皆さんと話せるのを非常に楽しみにしてます。僕は最初、家電のデザインをしていて、時代の流れとともに「UXが大事だよね」と考えが変わり、デジタルのデザインにも携わるようになりました。

長谷川)僕も浅沼さんも、電気屋さんの出身ですよね。あの頃、インターフェーズというのは、そのあたりの領域しかなかったですよね。

浅沼)そもそも長谷川さんと同じで、やはり僕が当時デザイナーとして憧れるとしたら日本のメーカーで、世界でナンバーワンという印象が強かったです。

柳)そうなんですよね。

浅沼)そうなんですそうなんです、昔は(笑)。だいぶ今とは違いますよね。その当時の日本のメーカーに入るのはすごい難しくて、かつ優秀な人が非常に沢山いたので、今思うとキャリアを考える時の、最初のステップとしては非常に僕としてはありがたかったです。

柳)今と時代が全然違って面白いですね。

長谷川)そんなお2人と、今回は「僕らのお金をリデザインする〜みんなの銀行誕生秘話〜」というテーマで、日本の金融業界のDX化の現状や、デザインの力で生まれた日本初のデジタル銀行の今を探っていきます。

①「銀行 = ライフスタイルブランド」 化

―そもそも日本における銀行のデジタル化は世界レベルで見て遅いのでしょうか?

柳)やはり海外と比べると非常に遅いです。金融というものが今まではインフラとして捉えられていたので、生活者の人も従来の在り方にあえて疑問を持たない存在だったのですが、近年金融は私たちの生活のためのツールであり、自分たちが扱える・マネージできるものだと捉えられています。それに対して世界の金融機関が動き始めて、銀行の形や提供するサービスの様相を変えていくというのが今の金融業界の体験潮流として挙げられます。

長谷川) 年に1回か2回見るか見ないかというくらい、必要なとき以外、絶対触らない堅い金庫の様な銀行のイメージが、僕らの頭の中にありますよね。ただ、携帯を皆が持ち歩けるようになった時点で、そこが変わってこないと駄目ですよね。

柳)そうですね。例えばドイツ初のモバイルバンクであるN26という銀行では、ライフスタイルブランドを掲げていて、自分が手に持って上手く馴染むかといった部分をしっかり見定めてデザインにこだわっていますよね。洋服やインテリアの様に、持っていて愛したくなるようなブランドを目指している。だから一応物理的なカードもあるんですが、メタルカードという別のカードにして、デザイン性の高いもの、番号とかも書いてないものを作りました。そういうものを提供することでもう少し金融機能というものを、道具の様に生活者に捉えてもらうことは今の潮流かなと思います。

②店舗だけでなく、業務プロセスからDXを思考する「デジタルバンク」

― 「みんなの銀行」をどう定義していますか?

柳)みんなの銀行は簡単に言うと、スマホで完結するデジタルバンクと公言しています。全ての金融機能が全部スマホで完結する。ネットバンクと何が違うのかとよく聞かれますが、ネットバンクは語弊を恐れずに言うと、店舗がないだけで、その他のプロセスや業務の全てが従来の銀行と根本的には変わっていません。それに対して、僕らが定義しているデジタルバンクというのは、全てゼロから、デジタルで作っている。そのため業務プロセスも全部デジタル化し、DXされているということだと説明しています。

長谷川) デジタルバンクは全く新しい取り組みであり、ふくおかフィナンシャルグループの方々も前例のないやり方で取り組む必要があったと思うのですが、どのような期待がありましたか?

柳)地方銀行というのもあって、これまでローカルでのビジネスがメインになっていたところが、デジタル化した瞬間に一気にローカルからグローバル規模でのビジネスになります。そのビジネス範囲の拡大に対しては、非常に期待がありました。僕らは、今から作る銀行は今まで見たことがない銀行であると公言していました。
銀行であることは間違いないんだけど、今まで見たことがない銀行を作ろうということで、アクセンチュアとふくおかフィナンシャルグループの皆さんとで共創しようという意識で始まりました。彼らはこのプロジェクトが始動する以前から、従来の銀行の職員としてキャリアを積んできた方が非常に多いので、守らければいけないところは非常に熟知しており、銀行法という法律があるので、ここは駄目だよ、ここはいいよ、そこまでいったら駄目だよ等、しっかり話しながら進めました。
やくわり分担としては、僕らはとにかく最先端に引っ張り、彼らは危ないところを守る、といった形で上手くコラボレーションしながら作っていきました。

③将来の顧客にターゲットを振り切るも、現顧客からも高満足度を獲得

長谷川) スマホ操作を前提としたアプリということで、高齢者と言うよりは、若い方をメインターゲットに設定されたと思うんですが、メインユーザー選定に係る決断もスムーズに実施できましたか?

柳)ユーザー選定に係る話は、個人的に結構興味深い学びがあったと思っているのですが、基本的に、銀行の生業は、ある程度ミドルエイジ以上の人たちが資産運用等で預け入れた資産を運用することで成り立っている側面があります。ただ、これからは、一番若い世代であるデジタルネイティブ、いわゆるZ世代、ミレニアル世代など、生まれながらにしてiPhoneやiPadといったデジタルデバイスに慣れ親しんでるような層に向けて作っていくべきだと考えました。2030年頃には日本の生産人口の6割以上を占めると言われているので、今のうちから数年後のメインプレーヤーを確実に押さえるということを、最初から意識してましたね。その点はやはり、ふくおかフィナンシャルグループの皆さんの情熱を感じたと言いますか、もしかしたら地方銀行さんだからこその動きだったのかもしれないです。とはいえ、金融機関に、こんなに新しいことに全力を注げるイノベーティブな人たちがいるんだというのが、僕の最初の感想でしたね。

長谷川) 浅沼さんも、メガバンクの中でデザイングループを率いてらっしゃったと思うのですが、いかがでしょうか?

浅沼)今はアクセンチュアの動きに近い部分はありまして、銀行の部門の人と一緒にどういうサービス作っていこうかということを、やり取りしています。僕も凄いと思ったのは、あそこまでターゲットを振り切っていることです。やはり短期勝負ではないところの判断が必要で、正直結構難しかったと思います。預貯金額は明らかに世代ごとで異なりますので、今のマーケットを見るとどうしても50代60代をターゲットに据えがちなところを、あえてZ世代に振り切っていたというのは、非常に勇気があると思っています。

柳)もう一つ興味深い話があります。僕らが作ったみんなの銀行アプリも、当初は狙い通り、ユーザーの7割程度が10~30代の方でした。ただし、高年齢層の方々も多くいらっしゃって。アプリなので、様々なフィードバック・声を吸い上げているのですが、そこに高齢の方々からのネガティブな声は全くなかったことが驚きでした。もちろん当初は、年代を皮切りにターゲッティングを実施し、その世代に刺さる、尖ったUIを作りましたが、結果としては、実は利用者の年齢層はさほど関係ないのかもしれないと分かりました。50代60代の方のデジタルデバイスに関するリテラシーレベルも実は非常に向上しているのではないかと思っています。

長谷川)そうですよね、多分50代の方は、ファミコン年代になるはずなので、ある程度、デジタルデバイスに慣れ親しんでいるんですよね。

柳)僕の母親も70代半ばぐらいですが、スマホユーザーなので、そう考えると、年代問わず、スマホを使ってたらある程度、アプリ操作には慣れてるのかなと思います。(笑)

出演者紹介

浅沼 尚さん|デジタル庁 Chief Design Officer
2021年9月からデジタル庁のCDO(Chief Design Officer)に就任。三菱UFJグループ戦略子会社Japan Digital DesignのCXO(Chief Experience Officer)を兼職。
インハウスデザインとデザインコンサルティングの経験を活かし、サービスの体験デザイン戦略策定とデザイン組織立ち上げに従事。IF Design Award、グッドデザインアワード等、国内外のデザイン賞を受賞。
https://www.digital.go.jp/

柳 太漢|Accenture Song
これまでアートディレクターとしてブランディングやデジタルプロダクトの仕事に従事。2017年より、アクセンチュア インタラクティブに参画、現在はAccenture Songにて領域と固定概念に囚われない視覚的アプローチを主軸に、様々な事業・企業変革をデザインディレクターとして支援。昨年は、Campaign Asia Pacific 誌「Agency of the Year 2021」にて、「Strategic/Brand planner of the year」を受賞。
https://www.accenture.com/jp-ja/services/digital/interactive-fjord-tokyo

長谷川 踏太さん|株式会社ギフティ Chief Creative Officer
1997年英国ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(RCA)修士課程修了。ソニー株式会社デザインセンター、ソニーCSLインタラクションラボ勤務などを経て、2000年ロンドンに本拠を置くクリエイティブ集団tomatoに所属。2011年から2019年までW+K TOKYO のECDを務めたのち、2020年から株式会社Giftee CCOに就任。ブランディング、UXデザインから創作落語まで、アウトプットは多岐にわたる。
https://giftee.co.jp/

Accenture Song Design Instagramアカウント: @song.design.japan
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