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楽しさと正しさでつながるデザインのあり方 -日本とアフリカをつなぐボランティア活動-

こんにちは。アクセンチュア ソング サービスデザイナーの金谷です。今回はSong Designチームが有志でデザイン支援を行うボランティア活動について、最新の活動事例を通じてご紹介します。このボランティア活動では、アクセンチュア社内に存在する多種多様なボランティアプロジェクトが社会により大きなインパクトをもたらすべく、アクセンチュア ソング デザインチーム所属の有志メンバーがボランタリーのチームを組成し、デザイン支援に関わりました。日々の業務と並行して本活動に携わるメンバーは、ボランティア活動だからこそ得られる経験や貴重な挑戦の機会に、日々多くの刺激や学びを得ながら活動を行っています。

今回の記事では、その活動事例の一つとして、認定NPO法人AfriMedico(以下アフリメディコと表記)との共同ブロジェクトである、アフリカと日本を繋ぐサステナブルブランド”AfriMedico TSUNAGU”のローンチストーリーをお届けします。


AfriMedico TSUNAGUとは?

サステナブルブランド“Afrimedico TSUNAGU”は、アフリメディコから、今年6月にローンチされました。アフリメディコでは、江戸時代から続く日本伝統の置き薬システムにヒントを得て、医療サービスが行き届かないアフリカ農村部の家庭に、置き薬を設置する医療事業を展開しています。今回のブランド立ち上げは、彼らが創業期から掲げてきた「医療を通じて、アフリカと日本をつなぎ、健康と笑顔を届ける」というミッションの実現を目指して始動したものです。

”Afrimedico TSUNAGU”では、アフリカの文化からインスピレーションを得た医療衛生プロダクトを日本の親子世帯に届け、得られた収益を全てアフリメディコの置き薬事業へと還元する仕組みを実現しています。日本の子どもたちがプロダクトを手にして、アフリカの子どもたちの価値観に触れる。その一連の体験を通じて、新たな知見が広がるという「価値の循環」を目指すブランドです。今回のブランドローンチに際して、ブランドのプロダクト第一弾となる、“TSUNAGU BANSOKO(絆創膏)”が、クラウドファンディングプラットフォームCAMPFIREから発売されました。


写真前列左から、坪井さん, 佐野さん, 萩原さん
写真後列左から、村上さん, 宮内さん, 金谷(筆者本人), Wooさん

今回はアフリメディコの理事兼アクセンチュア ソング シニア・マネジャーの坪井さん、そしてアクセンチュア ソング デザインチームから今回の活動に参画したデザイナーのうち、ビジュアルデザイナーの佐野さん、Wooさん、萩原さん、村上さん、宮内さん、サービスデザイナーの金谷(筆者本人)が一堂に会し、これまでの取り組みを振り返る対談を行いました。

はじまりの経緯

Q.今回のAfriMedicoチームとアクセンチュア ソング デザインチームの協働プロジェクトは、どのようなきっかけで始まったのですか?

坪井:きっかけは本活動のデザインリードであったアクセンチュア ソング デザインチームの野田さんに、以前私のアフリメディコでの活動を紹介したことがきっかけでした。野田さんが「デザイナーは根底には社会に対していいことをしたいと思っている、手伝いたいと言ってくれるんじゃないかと思う」と二つ返事で応えてくれたことが印象に残っています。そこから野田さんがデザインチームの皆さんに声をかけてくださり、あくまでボランタリーでの前提で、我々の活動に共感いただける皆さんとプロジェクトを始動させました。アクセンチュア ソング デザインチームの皆さんは私自身、心から尊敬しているチームでしたので、このメンバーなら何かやってくれる、デザインの力で社会を変えて行ける何かができるはずとわくわくした事を覚えています。

Q.無事クラウドファンディングがローンチされ、149人もの支援者さまからの応援で、当初の支援目標を大きく上回る達成率191%を実現することができました。(2023年8月18日時点)ぜひ今の感想をお聞かせください。

坪井:クラウドファンディングの反響として、とても嬉しく感じたことは、エシカル領域での小売事業者様や、薬局の展開を行う企業の方から「自分の店におきたい」「ECサイトで取り扱いたい」などのお声をいただいたことです。僕たちNPO法人は、基本的には限定的なネットワークの協力を通じて活動しているので、今回の活動を通じて、これまでアプローチできなかった“潜在層”の方々に出会え、社会を変えていこうとする取り組みを知っていただけたことは嬉しいです。

正しさと楽しさのものづくり

金谷:今回取り組んだようなソーシャルグッドに根差したものづくりは「正しさと楽しさのバランス」をうまくとりながら、かたちを起こしていくことが重要なのかなと感じました。テーマ自体の正しさだけを打ち出しても、「頭では理解できるけど心は動かない」といった状況が生まれてしまいます。まず前面に楽しさがありつつ、背景にはきちんとテーマとしての正しさが備わっていることがとても大事であるなと。そうした“楽しさ”を引き出して強化するという観点から考えると、今回デザインチームが携った意味が強く現れていると思います。

Q.まず、このプロジェクトの「楽しさ」の部分を伝えることについて、特にどういうことを考えながらデザインワークに取り組んでいましたか?

宮内:絆創膏のビジュアルデザインを制作していた際、絆創膏一枚一枚にプリントするモチーフやパターンに使用したアフリカの子供たちの絵が「こんなに力強いものなのか」と驚きました。今回絆創膏に使用した絵柄はすべて、アフリメディコチームとアフリカの子供達とのお絵描きワークショップを通じて生み出されたものです。数々の作品をデータで拝見したなかでも子供たちが描いた絵が特によかったので、それらをデザイナー側で加工するのではなく、作品そのままの力強さを守る形で使用できないかと考えました。そのため、絆創膏というアイテムに子供たちの絵を”託す”イメージで、そのままプロダクトに載せていくことを重要視しました。

萩原:今回ブランドロゴとパッケージのデザインを担当していましたが、宮内さんの考えに共感する部分があり、アフリカの子供たちの絵をとにかく際立たせることを意識していました。そして、その意識をビジュアルデザイン全体のデザインルールに反映させることができたかなと思っています。例えば絆創膏のパッケージデザインではTSUNAGUというブランド自体の存在感は少し抑えて、パッケージ自体が子供たちの絵を受け止めるフレーム・額になることで、何かいい意味での彼らのリアルさ・生々しさみたいなものを際立たせることをとても意識してつくっていました。

佐野:子供達の絵に込められた視覚的な“楽しさ”の話がありましたが、それぞれの作品自体に込められたメッセージの部分にも面白さがあったと思います。アフリカ現地で行われたお絵かきワークショップでは「怪我や病気になったときに笑顔にしてくれるもの」がテーマになっていました。自分に元気をくれるもの、自分を守ってくれるもの、幸せな気持ちにしてくれるものなど、彼らの価値観を問うようなテーマだったからこそ、絵に込められたメッセージにとても強くカルチャーが出ていたなと思います。日本の子供たちとは全く違う発想を感じられました。

金谷:特に印象的だったのは、子供達が込めてくれたメッセージには、「ジンクスやおまじない」のような、アフリカの国々のカルチャー表現が含まれていたことです。たとえば、多くの子供達が植物や大自然の存在、食べ物など “元気や力をくれると信じているなにか“を描き表していました。一方で、日本の子供達も、怪我をした時に「痛いの痛いの、飛んでいけ」と唱え、ジンクスやおまじないを信じることには馴染みがあると思います。アフリカと日本の子供達は、話す言語も暮らし方も違いますが、”信じることで元気がでて笑顔になれる“という部分は共通していて、一方で、日本の子供達が未だ出会ったことのない、アフリカのカルチャーを新しい刺激として感じてくれると嬉しいです。

佐野:今回のプロジェクトが目指すところの一つとして、アフリカ、特にタンザニアの文化を通じて、日本の子供達に異国のカルチャーを知ってもらうという目的がありました。結果的に、現地の子供達が描いた絵を通じて、彼らのカルチャーや価値観が表現され、そしてその絵があしらわれた絆創膏を日本の子供達が使う。まさに、国境を跨いだ子供たち同士の良いサイクルが、このプロダクトを通じて生まれたのかなと思います

Q.「楽しさ」の話に続いて、このプロジェクトの「正しさ」の部分を伝えることについて、特にどのようなことを考えていましたか?

WOO:今回のようにアフリカの子供たちのクリエイティビティが、プロダクト自体の求心力となったことで、”同情”のような気持ちからソーシャルグッドが始まるのではなくて、彼らのクリエイティブな才能にお金を出してもらうという、新しい価値交換のあり方が生まれたと思っています。“あげる・もらう”という関係性ではなく、“お互いが持っているものを通じてつながる”という関係性を生み出すことができたのだと思います。そのような点において、すごく意味があるプロジェクトだったなと感じていますね。

村上:まさにその “あげる・もらうではない関係性”をどのように実現できるか、具体的には何も決まっていない段階から、たくさん考えることができてよかったなと思っています。特に絆創膏にまつわるユーザーリサーチをしていたときには、実際に社内にいる子持ちのメンバーにインタビューを実施し、アイデアや考えを生み出していきました。たくさんの人に話を聞いていくなかで、「絆創膏=嫌なことがあった時に心が楽になる魔法のアイテム」なのだというインサイトを発見。その発見が「おまじない」という今回のコンセプトの中核を担うアイデアにつながりました。なにもないところから、手と頭を動かしたからこそ、最終的にこのようなユニークなアイデアが生まれたのだと思っています。

坪井:今回一緒にワークショップをしたアフリカの子供達はみな、農村部で生活をしています。1日の生活もままならないこともあるけれど、そんな彼らでも絵を描くことはできる。その描いた絵がこういう形でデザインされて日本に来て、共感してくれた人たちが価値を感じて使ってくれる。そして得られた収益は全てアフリカの子供達へ置き薬となって還元される。彼らからしたら、“絵を描いていたら自分の家の置き薬の薬が増えていった”という構図が出来上がるのです。これはサステナブルなモデルとして回していけるのではないかと感じ、プロジェクトを進めていきました。

ソーシャルセクターにもたらすデザインのインパクト

Q.このようなソーシャルセクターのお題に、デザインの力で切り込んでいったことで、“ここがデザインの力だな”と改めて実感したことはありましたか?

坪井:はい。実際に購入してくださった方の声を聞いたときに強く感じました。BANSOKOを手にとってくださった方々からは、「デザインがかわいいから欲しくなった」、「子供にアフリカの事を学ばせてみたい」など、純粋にプロダクトやデザインそのものを評価し、購入していただいたことが分かる意見が多く集まりました。途上国支援という名目で購入するのではなく、実際にプロダクトを手にとった後で、実はその消費が社会の誰かの役に立つことに使われているのだと後から知る構図ができたのは、まさにデザインの力だと思います。

我々のようなソーシャルセクターにデザインの力は未だ行き届いていないのではないかと思います。今回のプロジェクトで、デザインを通じて社会を変えていける事は証明できたのではないかと思います。私自身もソーシャルセクターとデザインを繋ぐ事をライフワークとして続けていきたいと思います。

アクセンチュア ソング デザインチームのサイドプロジェクト

Q.日々の業務のサイドプロジェクトに取り組んできたなかで、率直に今どのような感想をもっていますか?

WOO:これまでのメンバーからのコメントから伝わってくる通り、おそらくみんな愛情をもって、この活動に取り組んでいたのだと感じました。普段の業務とはまた違う愛情のかたちがあって、ある意味で、この活動がリフレッシュになっていた人もいると思います。デザイナーは、忙しくなるほど、とことん考えて深掘りしすぎてしまう傾向があると思っていて、そのような時に、本活動がアクセントとして入ってくると、気持ちと頭を入れ替えるきっかけになると思いました。

萩原:WOOさんが話していた通り、関わるメンバーがみんな愛を持って活動に取り組んでいたので、チームの根底にある信頼感やあたたかさのなかで、ものづくりができた時間だったと思います。

おわりに

Q.最後に改めて今回のプロジェクトはどのようなものだったと感じていますか?

坪井:改めてアクセンチュア ソング デザインチームとプロジェクトを創りあげてきたことで、もちろん社会に対しても、そして僕たちの組織にとっても、本当にいい影響をもたらすことができたと思っています。このプロジェクトに関わってくれたみなさんにとって意味があるといいなと思いますし、途上国での活動などの社会課題をデザインの力で変えられる事を知ってもらいたいと思います。今回の挑戦は、ここから先にも繋げていこうと思います。

筆者プロフィール

金谷 莉沙 / Risa Kanaya
サービスデザイナー / Service Designer
2022年アクセンチュア Song Designに新卒入社。学生時代は、慶應義塾大学SFCにて経営戦略(主に組織戦略)を専攻する傍ら、イラストレーターとして作品制作を行う。経営戦略と顧客/従業員体験の接続、デザイン倫理に関心をもつ。趣味は、お散歩と編み物。

アクセンチュア ソング Instagramアカウント: @song.design.japan
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