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「セブンマイルプログラム」がこだわり抜くお客さま体験とは?「ためる」「つかう」にフォーカスしたシンプルなサービスを追求―【座談会】セブン&アイ・ホールディングス x Fjord Tokyo

セブン&アイ・ホールディングスとFjord Tokyoが協働して2020年6月にリニューアルしたグループ事業横断ロイヤリティプログラム「セブンマイルプログラム」が、このたび2021年度グッドデザイン賞を受賞しました。両社の主要メンバーが一堂に会し、「セブンマイルプログラム」のリニューアルプロジェクトのこれまでの取り組みを振り返るとともに、同プログラムの今後を展望しました。

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写真 左から:伊藤 光(Fjord Tokyo サービスデザイナー)、竹石 晶子(Fjord Tokyo ビジュアルデザインディレクター)、番所 浩平(Fjord Tokyo共同統括 グループ・ビジネス・ディレクター)、伏見 一茂 氏(株式会社セブン&アイ・ホールディングス デジタルマーケティング部 シニアオフィサー)、中嶋 篤史 氏(株式会社セブン&アイ・ホールディングス デジタルマーケティング部 オフィサー)、芹澤 紀恵 氏(株式会社セブン&アイ・ホールディングス デジタルマーケティング部 オフィサー)

「セブンマイルプログラム」をリニューアル

――このたびは2021年度グッドデザイン賞の受賞おめでとうございます。まずはセブン&アイ・ホールディングスを代表して伏見さんから、受賞に対するご感想をお聞かせいただけますか。

伏見 (7&i) ありがとうございます。優れたデザインを評価する賞として社会に広く知られるグッドデザイン賞の受賞を本当にうれしく思います。

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もともと「セブンマイルプログラム」をスタートしたのは2018年6月のことですが、今回のリニューアルではFjord Tokyoの協力を得ながらデザインをゼロベースで見直してきたこともあり、とても感慨深いものがあります。私たちデジタルマーケティング部にとっても大きな自信につながりました。

――読者の皆さまに向けて、あらためて「セブンマイルプログラム」についてご紹介いただけますか。

芹澤 (7&i) セブン&アイグループの各店舗や統合通販サイト「omni7」を横断した7iD会員向けのロイヤリティプログラムです。各店舗でのお買い物やお食事で税抜200円ごとに1マイルがたまり、たまったマイルをお好きな特典と交換することができます。

――どんな特典が用意されているのでしょうか。
中嶋 (7&i) 最近大きな話題になったものに「レジ袋風エコバッグ」があります。セブン-イレブンの各店舗で提供しているレジ袋を本物そっくりに再現したエコバッグで、交換開始後わずか1分で品切れになってしまうほどの人気を集めました。また、セブンプレミアムの「お菓子詰め合わせ」や「フリーズドライ食品詰め合わせ」も人気特典ランキングのトップに上がりました。

これらに象徴されるように、日々のお買い物でのちょっとした楽しみや、これまで知らなかった商品との出会いといった、新たなお客さま体験を提供する特典を用意しています。

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幅広い年齢層のお客さまにどうやって楽しみを提供するか

――こうしたサービスやUX/UIをデザインする過程では、両社でどんな議論を重ねてきたのでしょうか。

中嶋 (7&i) 最も熟慮したのは、どうやって幅広い年齢層のお客さまに楽しんでいただけるサービスを実現するかという点です。「セブンマイルプログラム」のサービスを分かりやすく訴求するために導線をいかにシンプルにするか、文字のサイズ、ボタンの大きさに至るまで喧々諤々の議論を交わしてきました。

竹石 (Fjord) セブン&アイグループ様の事業会社は、セブン-イレブン・ジャパンからイトーヨーカ堂、そごう・西武、赤ちゃん本舗、ロフト、セブン&アイ・フードシステムズまで多様な業態に広がっており、ターゲットとするべきお客さまの年齢層は、私たちが当初想定していたよりもはるかに広範囲に及びました。若年層には共通認識として普及しているUIパターンや定石が浸透していないため、”要素を削ぎ落としてシンプルにしたいけど説明不足だと伝わらない”、といったジレンマは常に抱えていました。

芹澤 (7&i) スマホを使いこなせない高齢のお客さまに対して、どういうサイトの見せ方をすれば楽しんでいただけるのか、皆で悩みましたね。単に「見栄えが良い」、「おしゃれな」サイトだけではなく、ユーザーの年齢層やリテラシーを配慮した設計にするために議論を重ねました

番所 (Fjord) 先ほど導線の簡略化や、文字サイズ、ボタンの大きさというお話がありましたが、そのほかにも英語やカタカナの表記をできるだけ抑えて、ひらがなを使ってわかりやすく情報を伝えるなど、考慮しなければならないポイントは山積みでした。

中嶋 (7&i) その意味でもFjord Tokyoの皆さまには本当に感謝しています。サービスをどのように訴求するか、体験をいかにシンプルにするか、といった議論を交わしつつ、文字サイズやボタンの余白といった細部への的確なアドバイスがとても役立ちました。「セブンマイルプログラム」のリニューアルにあたりコンセプトづくりの段階からプロジェクトに加わっていただいたことが奏功し、私たちが小売ビジネスにかける思いなど背景までしっかり理解した上で濃密な議論ができたことが、サービスそのものを含めたUX/UIのブラッシュアップにつながっています

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――両社のコラボレーションが発揮されたのはどんな場面ですか。

伊藤 (Fjord) 印象に残っているのはユーザーテストですね。準備から当日まで、セブン&アイ・ホールディングスの皆さんが一緒に考えてくださいました。ユーザーの声をベースに議論する土台がしっかりと作れて、共創につながったと思っています。

芹澤 (7&i) また、ユーザーテストのフィードバックや、議論を重ね検討した改善ポイントをすぐにプロトタイプに反映し、操作感やデザインイメージを実機で確認できるようにしていただいたおかげでスピード感を持って品質を高めていけました。

日常のお買い物の中に自分だけの楽しさや幸福感を創出

――「セブンマイルプログラム」のリニューアルに際して、両社がどんなことを重視してきたのかよく理解できました。とはいえ、世の中ではあらゆる業種の企業がさまざまなロイヤリティプログラムを提供しています。そうした中で「セブンマイルプログラム」は、お客さまのどのような“ペインポイント”を解決しようとしているのかを教えてください。

伏見 (7&i) 「セブンマイルプログラム」が一貫して追求しているのが、「いつものお買い物で私だけのHappyを」というコンセプトです。コンビニエンスストアであれ、スーパーマーケットであれ、日常のお買い物は生活や家事のひとコマであり、楽しいと思っているお客さまは実はそれほど多くありません。要するに、そうした日常のお買い物の中にこそ、自分だけの楽しさや幸福感を創出していきたいのです

世の中の多くのロイヤリティプログラムはポイントを使った値引きの訴求が中心であることが多く、その点において「セブンマイルプログラム」は一線を画しています。先ほどの「レジ袋風エコバッグ」など、「セブンマイルプログラム」でしか交換できない特別な特典を用意し、次々と入れ替えながら提供することで、マイルを「ためる」「つかう」楽しみと喜びを創出しています。

こうしたお客さま体験に軸足を置いていることが、他のロイヤリティプログラムと「セブンマイルプログラム」の最大の違いであり、お客さまとのエンゲージメントを深めていくことに全力投球しています

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番所 (Fjord)  実際、世の中で展開されているポイントプログラムを見てみると、日常生活のお買い物の中で何となくポイントが貯まり、ふと気づいたときに使う、あまり喜びを実感しづらいサービスも多くあるように感じています。
これに対して「セブンマイルプログラム」では、お買い物でマイルがたまっている実感を持てる体験であるとか、狙った特典に向けてマイルを着実にためていく体験を提供することで、サービスへの感度を高めて、継続的に利用してもらえるようにしています。 

伏見さんのおっしゃるとおり、もっとマイルをためたくなる、つかいたくなる、お買い物へのモチベーションを高めるための仕組みを、デジタルマーケティング部の皆さまと一緒につくってきました。

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――そうした「セブンマイルプログラム」のこだわりは、UX/UIにはどのような形で具現化されているのですか。

竹石 (Fjord) 伏見さんのおっしゃったマイルを「ためる」「つかう」は、UX/UI検討における非常に重要なポイントになっており、「お客さまに『ためる』と『つかう』の循環をとにかく一度でも体験していただく」ことを当初からの目標として、可能な限りシンプルな設計を追求してきました

UX/UIデザインは、ともすれば議論を重ねれば重ねるほど多くの機能を取り込もうとして複雑になりがちです。引き算のアプローチで、「ためる」と「つかう」の2つのアクションに振り切ったデザインに徹することで、シンプルなUX/UIを目指しました。

伊藤 (Fjord) 具体的にはサイトを訪れると、画面の一番上の目立つ場所にお客さまが所有しているマイルがカウントアップして表示されます。「前回からこんなにマイルが増えたんだ!」ということを実感できるのです。そのマイルがどのお買い物でたまったのか、履歴もボタン1つですぐに確認することができます。

さらに「つかう」ボタンを押すと、所有しているマイルで交換可能な特典が一覧で表示されるとともに、新しく提供された特典もすぐに確認することがきます。
このようにシンプルなデザインの中でも、マイルを「ためる」「つかう」というプロセスそのものを楽しんでいただくことを強く意識して、UI/UXの設計にあたりました

芹澤 (7&i) マイルを「ためる」「つかう」というプロセス自体を楽しんでいただくために、ゲーミフィケーション要素を盛り込んだ「ガチャ」も導入しており、「ガチャ」を契機としてサイトを訪問していただくサイクルを習慣化することにも成功しました。また、マイル履歴では毎月のマイル増減をグラフで表現することで、「ためる」「つかう」の行動を可視化し、マイルへの感度を高めていくという仕組みも実装しています。

中嶋 (7&i) 「ガチャ」もそうですし、2週間に一回のペースで新たな特典ラインナップを加えることでサイトを訪れるたびに、ワクワク感や新しい発見を得られることが「セブンマイルプログラム」の最大の特長であり、多くのお客さまから高い評価をいただき、使い続ける動機になっていると自負しています。

継続的な改善を通じて“ワクワク体験”を提供し続ける

――最後に「セブンマイルプログラム」の今後のさらなる発展に向けて、皆さまの意気込みをお聞かせください。

竹石 (Fjord) 「セブンマイルプログラム」のサイトもサービスそのものも、リニューアルが完了したから終わりではなく、リリースと同時に新たな取り組みがすでに始まっています。サイトを訪れたお客さまのアクセス状況や導線などを詳細に分析し、そこから抽出した課題の改善などを継続的に行っています。こうしたPDCAサイクルを通じて、Fjord Tokyoとしても「セブンマイルプログラム」のさらなるブラッシュアップに貢献していきたいと思います。

伊藤 (Fjord) 私自身は「セブンマイルプログラム」のプロジェクトから離れてしまったのですが、その間にもさまざまな業種のプロジェクトに参画し、サイトデザインの経験を積んでいます。再び「セブンマイルプログラム」のプロジェクトに加わる機会があれば、そうした経験と新しい知見も存分に生かしたいと思います。

番所 (Fjord) Fjord Tokyoとしても、今回セブン&アイ・ホールディングス様からパートナーに選んでいただいたことで、貴重な経験を重ねるとともに、グッドデザイン賞の受賞という栄誉まで得ることができました。引き続きセブン&アイ・ホールディングス様とともに、より良いお客さま体験を発信して社会に貢献していければ幸いです。

芹澤 (7&i) 竹石さんがおっしゃったように、「セブンマイルプログラム」はリニューアル版をリリースした以降も常に改善を繰り返しており、マイルの「ためる」「つかう」を中心としたお客さま体験をさらに強化していきます。
また、「セブンマイルプログラム」を通じて、これまでセブン-イレブンでしかお買い物をされていなかったお客さまが、「今日はデニーズで食事をしてみよう」と思っていただけるような、セブン&アイグループ各社に対する認知を高めることで、日々の生活シーンの中で楽しみや幸せを広げられる場にしたいと考えています。

中嶋 (7&i) セブン&アイグループが手がけている小売ビジネスでは、時代とともに変化するお客さまのニーズを的確に掴み、迅速にお応えしていくことが最も重要です。「セブンマイルプログラム」を通じて、お客さまにワクワク感を提供し続けるために何をしなければならないのか――、模索と改善の手を緩めることはできません。

伏見 (7&i) 今回グッドデザイン賞という栄誉をいただきましたが、これは決してゴールではありません。皆が語っているとおり、デザインはつくって終わりではなく、そこに魂を込めて、常に顧客満足度を求めて改善を図っていく姿勢がないと、ビジネスに生かすことはできません。とはいえ、お客さまにどんな新たな体験を提供するのが正しいのか、正直なところ答えはわかりません。だからこそ、あくなき挑戦を続けていくしか道はなく、「セブンマイルプログラム」をセブン&アイグループ全体のデジタルトランスフォーメーション(DX)の発信源へと発展させていきます。

――本日は貴重なお話をありがとうございました。

2021年度グッドデザイン賞の受賞ページへはこちらから↓

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