Fjord Tokyoが考えるデザインリサーチャーとは?
見出し画像

Fjord Tokyoが考えるデザインリサーチャーとは?

Design Voice by Fjord Tokyo

こんにちは。Fjord Tokyo デザインリサーチャーの渡邊です。今回は私たちのスタジオのケイパビリティを紹介する記事の第1回目として、Fjord Tokyoのデザインリサーチのしごとついてお伝えします

なお本記事は、あくまでFjord Tokyoの現場からデザインリサーチャーの仕事について考えた内容となり、アカデミズムの文脈でつくられたデザインリサーチの系譜をなぞることを目的とした記事ではありませんのでその点をご理解ください。

さて、読者の方のなかには「デザインリサーチ」という言葉そのものは知っているという方は多いと思います。一方、「デザインリサーチ / リサーチャーとは?」と聞かれて具体的に答えられる方は少数派でしょう。というのも、実際にデザインリサーチ / リサーチャーはビジネスやアカデミズム、さらには組織ごとにおいてもその実態が異なるからです。

そこで本記事では、私たちFjord Tokyoのデザインリサーチャーの仕事の実態を「よくあるしごと」「ならではのしごと」に分けながら紹介し、私たちをデザインリサーチャーたらしめるものはなんなのかについて考えたいと思います

デザインリサーチャーの「よくあるしごと」

デザインリサーチャーのよくあるしごとは、すでにある製品やサービスの体験を磨き込むための調査活動です。一般的にこれはヒューマンセンタード(人間中心設計)アプローチとも言われ、デザインリサーチャーのしごととして最も身近に想起されるものです。

こうした活動は言い換えれば「今いる山の頂上を見つけるしごと」であり、体験の改良ポイントの発見〜その解決後の姿(=目指すべき体験の頂上)を描く営みです。こうしたしごとにおいて、私たちデザインリサーチャーは常に「誰かの今の想い正しく受け止める」ことが求められます。そのために私たちFjord Tokyoのデザインリサーチャーは、科学的な検証手法などを織り交ぜた最適なリサーチ計画を練り、製品やサービスの利用者の深い声や姿を収集・分析することに注力しています。

Design Voice_図01

しかし、ここで私は「デザインリサーチャー」という呼び名についてこのような疑問を感じます

「なぜこのしごとをするひとはただの“リサーチャー”ではなく“デザインリサーチャー”なのか?」

デザイナーの特性を「何かをつくる」という性に見出すとすれば、果たして「今いる山の頂上を見つけるしごと」だけが“デザイン”リサーチャーのしごとと言い切れるでしょうか?なぜなら、ここまで語った類のしごとはあくまで「改善するためのデザインの方向性を導くリサーチ」に閉じているため、単に“リサーチャー”と呼んで差し支えのない気もするためです。

デザインリサーチャー「ならではのしごと」

私は、デザインリサーチャーをあくまでデザイナーとよばれる職種の一種であると捉えることが、その「らしさ」を正しく理解するために大切であると考えています。

[A] デザインを通じたリサーチ

すでに存在する体験の頂上は現在の延長線にある可能性が高い他方、まだ見ぬ製品やサービス、ブランド像はそうした線形的な未来に存在するとは限りません。

そこで、私たちは「今いる山の頂上を見つけるしごと」に加え、「今いる山より高い山を見つけるしごと」としての調査活動を行っています。こうしたしごとを達成するには、時として既存の体験の改善点を見つけるよりも、ありうる未来の可能性をできるだけ簡単に、素早く、デザインの手法を用いて実験することが重要です。したがってここで取られるアプローチはヒューマンセンタード(人間中心設計)なものにとどまらず、つくりながら考えていくという態度を持った「デザインそのものを通じたリサーチ」のようなものになるわけです。

例えば「2031年における電力会社の新たな提供体験をデザインする」というお題があったとしましょう。現在(2021年)の電力使用における体験課題を洗い出すようなリサーチのみで、10年後の社会における電力会社の社会的意義を再考するに足るような示唆を出すことはできるのでしょうか。もちろんこうした不確実性の高いデザイン課題に対して絶対的に正しいアプローチは存在しません。しかし、少なくとも複数の可能性が考えられる未来について、現在の延長線だけで考えると思考の幅が限定されることは間違いありません

そこで、私たちはこうしたデザイン課題に対しては以下のような観点での予備調査(知識の蓄積)を行いつつ、そこから発想される未来の姿(デザインアイデア)のテスト実行(プロトタイプ)を繰り返すことで、ブランドと未来の生活者(社会)双方にとって“望ましい”未来をリサーチすることが可能だと考えています。

・エネルギー消費規制に関する動向(政治・法的な要素)
・エネルギーサービスにおけるトレンド(経済・ビジネス的な要素)
・住環境/生活/都市サービスの実態・変化...(社会・環境的な要素)
・発蓄送電技術の動向...(技術的な要素)...など

Design Voice_図02

他方、ビジネスとして成り立つ未来のブランドや提供体験を実際につくるには、組織を動かすための確からしさや妥当性、すなわち「筋の良さ」が非常に重要です。残念ながらデザインアイデアの筋の良さを確認するために未来の生活者の声を直接聞くことはできません。しかし、未来の体験についてプロトタイプを用いてリサーチする手法では、現在の生活者に未来を疑似的に体感してもらいながら彼らのフィードバックを得ることができます

このような考えから、私たちFjordのデザインリサーチャーたちは、時にはあらたなリサーチツールや手法をつくることを通じて、未来の時間軸におけるリサーチにも積極的に取り組んでいます。またこうしたデザイナー的な「つくる」特性をリサーチに応用しながら批判的に未来を考えるあり方は、"デザイン"リサーチャーをその名たらしめるユニークなアプローチであるといえるでしょう。

[B]組織をドライブするためのデザイン

そしてこの「つくる」という特性から、デザインリサーチャーにはもうひとつ重要なしごとが存在すると私は考えています。それは、リサーチから得られた成果物をきちんとストーリーとしてデザインし、アイデアの実装に向けて組織を動かすしごとです。「今いる山の頂上」も「今いる山より高い山」も、ただリサーチを通して発見されるだけではビジネスとしての価値は生まれません

そこで私たちFjordのデザインリサーチャーは、リサーチで得られた成果を第三者により正確に(もしくはより強力に)伝えるためのメディアをつくる必要があると考えています。そのため、私たちのリサーチ成果物はスライド資料にとどまらず、サービスを頻繁に利用する顧客をとらえたドキュメンタリー映像や、リサーチの概要から発見までをまとめたウェブサイトなど、様々な形式で伝える手段をつくることに注力しています。

画像3

The future of mobility -自動車や移動に関わる"リサーチアウトプット"をより広い層に知ってもらうためウェブサイトとしてデザインし公開した事例

デザインリサーチャーとして大切にしたいこと

このようにデザインリサーチャーとは「すでに存在する体験を生活者視点で理解する」といったいわゆるリサーチャー的側面を持つ一方、「つくりながら考える」や「伝えるためにつくる」のようなデザイナー的側面も持つしごとだと私は理解しています。そして冒頭の問い「私たちをデザインリサーチャーたらしめるものはなんなのか」に立ち返ると、こうしたリサーチャーそしてデザイナー的なアプローチの融合がそのひとつの答えなのかもしれません。

「人間の認知や行動」「社会の複雑さや不確実性」「ビジネスとしての制約」など私たちのデザインを取り巻く環境は非常に厄介なものです。こうした厄介さを切り抜けるためのひとつのアプローチこそが、以下3つのにまとめられるデザインリサーチャー的なしごとであると私は理解しています。

誰かの思いを丁寧に届ける

・生活者(顧客やユーザー)の体験に共感する
・生活者の抱える体験課題をありありと伝える
・体験課題の解決に向けて組織を動かす

まだ見ぬ未来を近づける

・デザイナーとしてのリサーチを通じ、ブランドや社会にとって望ましい未来の体験を見せる
・ブランドや社会にとってより好ましい未来が実現されるよう組織を動かす

不合理さや矛盾を切り抜ける

・論理的には理解しきれない人間の行動や社会の複雑さをありのまま受け入れる
・これと同時にビジネスとしての現実性と向き合う

デザインリサーチャーはあくまでデザインもしくはビジネスという大きな活動を担う役割のひとつです。今後も様々なタレントが集うFjord Tokyo / アクセンチュア インタラクティブでの実践を通じて、私なりのデザインリサーチャーのしごとを考えていきたいと思います。

筆者プロフィール

画像4

渡邊 光祐 - Watanabe, Kosuke
Design Researcher
慶應義塾大学SFC、豪スウィンバーン工科大にてデザインリサーチ(RtD)、サービスデザイン(SD)を修了後、アクセンチュア インタラクティブのFjord Tokyoにジョイン。ジョイン後は主にエネルギーサービスや行政サービスなどのデザインプロジェクトに従事。社会基盤や公共領域のデザインに関心があります。趣味は鹿島アントラーズの応援。
筆者Twitter アカウント: @ksk_wat


Fjord Tokyo公式Instagramアカウント: @fjord.tokyo
Fjord Tokyoではデザイナーを積極的に採用しています。詳細はこちらから↓。


みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!
Design Voice by Fjord Tokyo
デザインスタジオのFjord Tokyoが運営している公式noteです。採用ページ:https://accntu.re/2WSTGl7