”多様化する価値観と共感の重要性” 【連載】Fjord Trends 2021 をデザイナー自らが読み解く #06「共感への挑戦」編
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”多様化する価値観と共感の重要性” 【連載】Fjord Trends 2021 をデザイナー自らが読み解く #06「共感への挑戦」編

Design Voice by Fjord Tokyo

こんにちは。Fjord Tokyoでブランドデザイン・リードをしている河内(こうち)です。今回はFjord Trends 2021の7つのトレンドの中から、トレンド6「共感への挑戦」をご紹介します。

「共感」が益々重要になる時代へ

価値観が多様化する現代において、企業はどのように人々からの共感を得ることができるでしょうか?トレンド6にはそんな現代の企業が抱える課題に対するヒントが散りばめられています。

そもそも、なぜ今ブランドが人々から共感を得ることが重要になっているのでしょうか?それは、人々がブランドを選ぶ上で、ブランドが持つフィロソフィや価値観に共感できるかをより重視するようになっているからです。つまりブランドにとって、人々の共感を得ることがより大きな差別化要素になっているのです。

差別化要素は時代と共に、商品やサービスの機能やスペックからあらゆるタッチポイントを横断した顧客体験へと移ってきました。そして今、顧客体験に加え、ブランドが持つフィロソフィや価値観への共感も重要な差別化要素となっています。人々は、ブランドの根底にあるフィロソフィや価値観にまで鋭い目を向けるようになっているのです。

歴史的変化による不平等や格差の拡大

なぜ人々はブランドが持つフィロソフィや価値観にまで鋭い目を向けるようになったのか?と問いを深堀りしてみると、そこには社会の変化が大きく影響していることがわかります。

変化が激しいと言われる現代ですが、特に2020年は歴史上稀に見る変化が起こった年でした。COVID-19は人々の暮らしを大きく変えただけでなく、女性や子ども、社会的弱者が直面する不平等や格差をより悪化させるというネガティブな変化をも引き起こしています。

日本もその例外ではなく、COVID-19の影響によって働く女性の26%が解雇や休業を強いられており、この数字は男性の1.4倍にものぼっています。
出典:NHK「新型コロナ 女性の雇用に大きな影響 解雇や休業は男性の1.4倍」
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20201204/k10012745251000.html 

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Photo by Ross Sneddon

他の社会変化にも目を向けると、アメリカで再燃し世界中に広がったBlack Lives Matter運動の対象は、結果的に人種間の不平等だけでなく、ジェンダーや社会的マイノリティが直面する不平等にまで広がり、世界中で様々な意見が交わされるようになりました。このような社会情勢の中で行われたアメリカ大統領選挙では、相容れない価値観を持つ人々同士の間で対立や分断が生まれました。

自分の価値観に合ったブランドを選択する時代へ

このように、歴史的にも大きな社会変化を背景に、世界中で様々な社会的な不平等や格差が浮き彫りになった結果、人々は自分自身の立場や価値観をより一層意識するようになったのです。

それは、私たちの日常生活における選択・決断に大きな変化をもたらしました。購入する商品やサービス、ブランドが自分の価値観と合致するかどうか、言い換えれば、そのサービスやブランドの根底にあるフィロソフィや価値観に共感できるかどうかを、これまで以上に重視するようになったのです。

だからこそ、ブランドは今、自らのパーパス(社会における存在意義)や大切にする価値観を明確にし、それをストーリーとして発信し、更に行動で世の中に対して示していくことが求められているのです。

万人から共感を得ることは不可能に近い

ここまではブランドが人々から共感を得ることの重要性について説明してきました。では人々から共感を得るために、ブランドは何をすればいいのでしょうか?この問いに答える上で、一つ大きな問題があります。それは、万人から共感を得ることは不可能に近いということです。

社会問題や政治問題は人々の価値観に大きな影響を与えるだけではなく、前述のように意見が異なる人々の間で対立も生み出します。相容れない価値観を持つ人々が同時に存在する社会において、もしブランドが片方の人々に寄り添えば、それはもう片方の人々を排除してしまうリスクもあるということを意味しています。

まずは小さく始めてみる

この難題に向き合うにはどうすればいいのでしょうか?そのヒントは、「小さく取り組んでいくこと」です。まずは、自社・自ブランドのパーパスや、大切にする価値観を明確にした上で、いきなり社会全体から共感を得るような大きなテーマを語るのではなく、ブランドパーパスに最も近く共感してくれそうな人々にフォーカスしたコミュニケーションと行動を、小さく始めていきましょう

ユニリーバ・ジャパンのヘアケアブランド「LUX(ラックス)」は、“SHINE WITH NO LIMITS -女性の輝きに、限界なんてない-”というブランドメッセージを掲げ、無意識に生じる性別への先入観について社会に気づきを発信しながらそれを実際に取り除くアクションを起こしていく「LUX Social Damage Care Project」という活動を行っています。その第一弾として、全ての採用選考の過程で、顔写真など応募者の性別や容姿に関する全ての提出を無くし、個人の適性や能力のみに焦点を当てた採用活動をすることを決めました。結果、就職希望者や学生から大きな共感を得ることができただけでなく、様々な企業にまで賛同の輪が広がっています。

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出典:ユニリーバ・ジャパン「LUX Social Damage Care Project」
https://www.lux.co.jp/campaign/lux_socialdamagecare/
https://www.unilever.co.jp/news/press-releases/2020/lux-social-damage-care-project.html 

コミュニケーションと体験を融合させる

このように、ブランドのパーパスやフィロソフィに基づいたコミュニケーションと顧客体験作りを行っていくことが大切なわけですが、ここでもう一つの問題が浮上します。

それは、多くの企業ではブランドコミュニケーションの開発とブランド体験の開発が別々の組織で行われているということです。お互いの活動に一貫性がないと、ブランドが言っていることと実際に体験できることがバラバラでとても矛盾した顧客体験になってしまい、顧客がブランドに共感することは難しくなるでしょう。企業はコミュニケーションと体験を融合させ、ブランドパーパスを体現する一貫した取り組みを行っていく必要があります。

Fjordからの提案

ここまでの内容を踏まえ、ブランドが取るべきアクションをまとめてみます。
1. ブランドパーパスの明確化
最初に、自社・自ブランドのパーパスを明確にしましょう。パーパスを導出する際は、企業やブランドの創業理念や、自分たちが今後どういうブランドにしていきたいかという意思、社会の潮流、そして顧客をはじめとしたステークホルダーからのインサイトが重要なインプットとなります。

2. 従業員とのエンゲージメント形成
顧客や社外のステークホルダーに対するメッセージと体験を考える前に、従業員へ目を向けましょう。なぜなら、従業員はブランドの一番の代弁者であり、ブランドのメッセージを広く伝えてくれる重要な存在だからです。まずは従業員がブランドパーパスに共感できるように、丁寧に継続的な対話を続けていきましょう。

3. パーパスに基づくコミュニケーションと体験作りを小さく始める
続いて、ブランドパーパスに最も共感してくれそうな人々にフォーカスしたコミュニケーションや体験作りを、小さく始めていきましょう。共感してくれるステークホルダーが徐々に増えてきたら、その取り組みを広げていきましょう。

4. コミュニケーションと体験を融合させる
ブランドのコミュニケーションと体験はバラバラに考えるのではなく、両者を融合させ、一貫性を持たせましょう。社内体制も、それぞれがサイロ化された別々の組織で実行するのではなく、1つのチーム、または両者が十分にコラボレーションできるような体制を構築しましょう。

以上4つの取り組みを、企業のマネジメント層がコミットした上で推進していくことが、共感を生むブランドデザインのカギとなります。

さいごに

このトレンドは、企業やブランドの在り方そのものを見つめ直す、とても根源的なトレンドです。Fjord Trends 2021の他のトレンドと比べると、抽象的ですぐに結果につながりづらいと感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、前半で説明したように、社会変化を背景とした多様な価値観が渦巻く世界において、小手先のブランドメッセージやブランド体験を場当たり的に提供するようなブランドは次第に淘汰されていくでしょう。改めて自分たちのパーパスを再考し、パーパスを軸とした共感を生むブランドコミュニケーションとブランド体験を提供していくことが必要とされているのです。

筆者プロフィール

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河内 正吾 / Shogo Kochi
ブランドデザイン・リード / Brand Design Lead
九州大学大学院 芸術工学府 デザインストラテジー専攻修了。グローバルデジタルエージェンシーにて、日系ナショナルクライアントやグローバルブランドのデジタルマーケティング・コミュニケーション戦略立案、顧客体験設計に従事した後、2019年にアクセンチュア インタラクティブへ参画。現在はアクセンチュアグループのグローバルデザインスタジオ「Fjord Tokyo」でブランドデザイン・リードとして、ブランドの存在意義の導出から実際のブランド体験設計まで、机上で終わらない“実現”にこだわったブランドデザインを実践している。プライベートでは音楽、アウトドア、サッカー観戦に情熱を注ぐ。

【連載】 Fjord Trends 2021 をFjord Tokyoのデザイナー自らが読み解く
Trend 00 メタトレンド 「新しい領域の地図づくり」編
Trend 01 「歴史的転換期」編
Trend 02 「DIYイノベーション」編
Trend 03 「新しい時代の組織のあり方」編
Trend 04 「インタラクションの旅立ち」編
Trend 05 「流動的なサプライチェーン」編
・Trend 06 「共感への挑戦」編(本記事)
Trend 07 「リチュアルの消失と創造」編

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